お金の不安で、心が押しつぶされそうになっていませんか?
大丈夫、あなたは一人ではありません。
その重荷を少しでも軽くするために、国が定めた公的な生活保障制度が「傷病手当金」です。
あなたにとって、大切なお守りとなるでしょう。
この記事では、うつ病で休職し、退職後に傷病手当金を受け取った私の体験談のすべてをお伝えします。
難しい言葉は使わず、あなたの今の状況に寄り添いながら、申請手続きのゴールまで、一緒に歩ませてください。
【図解】申請から受給まで迷わない!傷病手当金の全体像フローチャート
「手続きって、何から始めればいいの?」
そんな不安を解消するために、まずは全体の流れを一枚の絵にしました。
今あなたがどの段階にいて、次に何をすればいいのか、いつでもここに戻って確認してくださいね。
【結論】傷病手当金とは?うつ病で休職する前に知りたい3つの基本
難しい制度だと思われがちですが、基本はとてもシンプルです。
まずは「自分は対象になるの?」という疑問を解消しましょう。
(1) 対象になる人:会社の健康保険に入っているあなた
傷病手当金は、会社員や公務員などが加入する「健康保険」から支給される、公的な制度です。
お手元の保険証に「全国健康保険協会(協会けんぽ)」や「〇〇健康保険組合」と書かれていれば、正社員だけでなく、パートや契約社員の方でも対象となります。
(2) もらえる金額の目安:お給料のだいたい3分の2
目安として「休職前のあなたのお給料(月収)の、約3分の2」が支給されます。
例えば、月収(額面)が30万円の方なら、月額で約20万円ほど。
治療に専念するための生活費として、本当に大きな支えになります。
この傷病手当金とあわせて、医療費の自己負担が3分の1になる自立支援医療制度も活用すると、より安心ですよ。
(3) もらえる期間:原則、通算で1年6ヶ月
支給が始まった日から、原則として合計で(通算して)1年6ヶ月分を受け取ることができます。
途中で一度復職し、また同じうつ病で休んだとしても、残りの期間分を再び受け取れる、とても心強い仕組みです。
【最重要】あなたが「傷病手当金をもらえないケース」に陥らないための5つの対策
「自分はもらえないかもしれない」という不安を抱えている方が、実は非常に多いようです。
でも、大丈夫。
これからお伝えする5つのポイントを知っておけば、ほとんどの「つまずき」は避けられます。
(1) 対策:まず「連続3日間」休む環境を作る
傷病手当金には「待期期間」というルールがあり、まず連続して3日間休む必要があります。
支給が始まるのは、その翌日の4日目からです。
(2) 対策:休職中に給与が支払われていないか確認する
休んでいる間にお給料が支払われている場合、傷病手当金は受け取れません。
ただし、お給料の額が傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。
多くの場合、休職中は無給となるため、この条件に該当する方がほとんどです。
(3) 対策:他の公的な給付金との関係を確認しておく
同じうつ病が原因で、障害年金など他の公的給付を受け取っている場合、傷病手当金の額が調整されることがあります。
重複して申請を考えている場合は、事前に会社の担当者や年金事務所に確認しておくとスムーズです。
(4) 対策:退職後の受給を考えているなら「退職日の過ごし方」が最重要
退職後も受給を続けるためには、絶対に守るべき鉄則があります。
それは「退職日に、絶対に出勤しないこと」です。
体験談:私が一番緊張した日
たとえ挨拶のためでも、少しでも出社すると「その日は働ける状態だった」と見なされ、退職後の受給資格を失ってしまう可能性があるのです。私も挨拶は本当に悩みましたが、お世話になった上司にメールを送り、部署の皆さんへ共有してもらう形を取りました。私物は事前に郵送でやり取りするなど、出社不要な方法を必ず相談しておきましょう。
(5) 対策:申請期限(時効は2年)を意識する
傷病手当金を申請する権利は、給料がもらえなかった日ごとに、その翌日から2年で時効になります。
ただ、生活費のための制度なので、1ヶ月ごとなど定期的に申請するのが一般的です。あまり溜め込まず、早めに手続きを進めましょう。
【見本でわかる】うつ病の「傷病手当金申請書」書き方完全ガイド
「申請書の書き方が一番不安…」その気持ち、痛いほどわかります。
ここでは、全国健康保険協会(協会けんぽ)の申請書を参考に、私が実際に悩んだ項目と、審査で不備とされないために工夫したことを具体的にお伝えします。
(1) 本人が記入する欄で悩んだポイント

- 申請書の項目「仕事の内容」:うつ病の症状で、具体的に何に困っていたかを書きました。
(例:「集中力や思考力の低下により、デスクワーク(資料作成、データ入力)を遂行することが困難な状態でした」) - 申請書の項目「傷病の原因」:ここはシンプルに、事実だけを書きました。
(例:「業務上のことか、私生活上のことか」を選ぶ欄では「業務外のこと」にチェックを入れ、「負傷または発病の状況」の欄には「〇年〇月頃から、不眠、気分の落ち込み等の症状が出現し、〇月〇日に医療機関を受診しました」のように記載しました。)
(2) 会社に記入してもらう欄でお願いしたこと
この欄は、休んだ期間や給与の支払状況を会社が証明するものです。
私は、上司に書類を渡す際に、以下のようなメモを添えました。
このように、お願いしたい内容を明確に伝えることで、担当者の方もスムーズに対応してくださいます。
(3) 主治医に記入してもらう欄で伝えたこと
審査において、この医師の意見書が最も重要です。
私は、診察時に自分の状態を正しく理解してもらうため、事前に伝えたいことをメモにまとめていきました。
私が医師に伝えたこと
- 仕事への影響:「集中力が続かず、簡単なメールの返信にも1時間以上かかってしまいます」
- 日常生活への影響:「1日中ベッドから起き上がれず、入浴も2~3日に一度がやっとです」
- 一番つらい症状:「常に頭にモヤがかかったようで、何も考えられません」
このように具体的なエピソードを伝えることで、医師は「労務不能(働けない状態)」であると、自信を持って証明書に書いてくださいます。
【体験談】私がうつ病で傷病手当金を受け取るまでの全記録
ここでは、休職から退職、そして実際の入金まで、私のリアルな心の動きと行動を時系列でお伝えします。
STEP.1:休職の決意と、傷病手当金の準備開始
「もう、無理だ…」
朝、ベッドから起き上がれなくなった日、私はついに休職を決意しました。
震える手で上司に電話し、事情を説明。
すぐに精神神経科を受診し「休職が必要」という診断書をもらいました。
この時、休職中は会社から給与が支払われることを確認。
同時に、退職後の生活のために傷病手当金の申請準備を始めました。
STEP.2:退職、そして申請書の提出
休職期間を経て、退職日を迎えました。
主治医からは「労務不能」の意見書をもらい、自分で記入する欄も、調子の良い日に少しずつ書き進めて完成させました。
全ての書類を揃え、会社の担当部署へ郵送。
「これで、あとは待つだけ…」と、少しだけ肩の荷が下りた瞬間でした。
STEP.3:通帳に記された「未来への希望」
書類を提出してから、約1ヶ月半後。
不安な気持ちでATMに行き、通帳を記帳すると、そこには「ケンポ」という文字と、まとまった金額が。
安堵感で胸がいっぱいになりました。
このお金のおかげで、私は治療に専念し、未来へ進む希望を持つことができたのです。
【FAQ】傷病手当金の「これってどうなの?」専門情報と体験談で回答
パートや契約社員でも対象になりますか?
はい、対象になります。傷病手当金は雇用形態ではなく、「勤務先の健康保険に加入しているか」が条件です。加入していれば、正社員と全く同じように申請できます。
申請してから振り込まれるまで、どのくらいかかりますか? 遅いと生活できないのですが…
お気持ち、とてもよく分かります。一般的には、書類に不備がなければ約1ヶ月~2ヶ月で振り込まれます。ただ、健康保険組合の審査状況によっては、それ以上かかることも。私もこの期間は本当に不安でした。当座の生活費として、少しでも蓄えがあると心の余裕に繋がります。
一度受給が終わった後、再発した場合でも2回目はもらえますか?
はい、もらえる可能性があります。同じうつ病が再発した場合でも、「社会的治癒」といって、復職して相当期間(明確な基準はありませんが1年以上が目安)が経っていれば、別の病気と見なされ、再び1年6ヶ月の受給資格が発生することがあります。詳しくは以下の記事で解説しています。
申請することによるデメリットはありますか?会社に不利な扱いをされませんか?
制度上の明確なデメリットはありません。傷病手当金は法律で定められた労働者の権利です。申請を理由に不当な扱いをすることは法律で固く禁じられています。安心して療養に専念できるメリットの方がはるかに大きいと言えます。
パワハラが原因のうつ病でも、傷病手当金はもらえますか?
はい、もらえます。傷病手当金は「業務外」の病気やケガが対象ですが、パワハラが原因のうつ病も、労災と認定されない限りは「業務外」の扱いとなり、傷病手当金の対象となります。労災認定には時間がかかる場合が多いため、まずは傷病手当金を申請し、生活の安定を図るのが一般的です。
休んでいる間に、少しだけアルバイトをしても問題ないですか?
傷病手当金を確実に受け取るためには絶対に控えましょう。傷病手当金は「働けない状態」だからこそ支給されるものです。アルバイトが発覚すると、不正受給と判断され、支給停止や返金を求められる可能性があります。今は治療に専念することが、未来の自分への一番の投資です。
まとめ:傷病手当金は、あなたが安心して休むための「権利」です
うつ病の治療で一番大切なのは、お金の心配を手放し、安心して「休むこと」です。
傷病手当金は、そのために国が用意してくれた、あなたの生活と心を守るための大切な「権利」なのです。
この記事のポイント
- 傷病手当金は、会社の健康保険に入っていれば誰でも使える心強い制度。
- 「もらえないケース」を避けるための5つの対策を事前に知っておけば安心。
- 申請書の書き方は、具体的な症状を自分の言葉で伝えることが何より大切。
- お金の不安を制度で手放し、今は「何もしない」ことに専念しよう。
この記事が、あなたの心の重荷を少しでも軽くする一助となればと願っています。
大丈夫、あなたはもう十分に頑張りました。
これからは、安心して休むことだけを考えてくださいね。
無理せず、あなたのペースで、少しずつ回復していきましょう。
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