はじめに:「復職が怖い…」その気持ち、私も同じでした
この記事を読むことで、復職までの全体像・会社との調整方法・再発を防ぐセルフケアが具体的にわかります。
うつ病で休職し、少しずつ回復してきたあなたが今、この記事を読んでくださっているのかもしれません。
「そろそろ復帰を考えないと…」
「でも、また同じように働けるだろうか」
「もし、また心が折れてしまったら…」
先の見えない不安と焦りで、一歩を踏み出すのが怖い。
痛いほどわかります、その気持ち。
このブログを運営している私・ななころも、かつては全く同じでしたから。
でも、どうか安心してください。
あなただけではありません。
そして、その不安を乗り越えるための「道しるべ」は、ちゃんと存在します。
この記事は、私自身の復職経験と、多くの当事者の声をもとに作り上げた、うつ病からの仕事復帰を目指すあなたのための「信頼できる地図」です。
複雑で、時に孤独を感じる復職までの道のりを、具体的なステップに分けて、一つひとつ丁寧に解説していきます。
この記事を最後まで読めば、あなたは
- 復職までの全体像と、今やるべきことが明確になる
- 会社との調整や手続きに対する具体的な準備ができる
- 「復職しない」という選択肢も含めて、心が軽くなる
そんな状態になっているはずです。
焦る必要はありません。
あなたのペースで、地図を一枚ずつめくるように、ゆっくり読み進めてくださいね。
あなたの現在地はどこ?復職へのロードマップ
まずは、全体像を把握することから始めましょう。
うつ病からの復職プロセスは、大きく分けて3つのフェーズで進み、常に「もう一つの道」という選択肢も持っておくことが大切です。
- フェーズ[1] 準備期:社会復帰に向けて、心と体のコンディションを整える時間
- フェーズ[2] 調整期:会社と円滑なコミュニケーションをとり、復帰の土台を作る時間
- フェーズ[3] 復帰後:再発を防ぎ、新しい働き方を定着させる時間
- (常に持つ選択肢)もう一つの道:「復職しない」ことも前向きな選択
この記事では、この流れに沿って、あなたが今どの段階にいて、次に何をすべきかを具体的に解説していきます。
(↓下の図の各項目は、記事内の該当箇所に移動します)
【テキスト版ロードマップ】
フェーズ[1]【準備期】社会復帰に向けて、心と体のコンディションを整える
このフェーズは、うつ病の急性期を乗り越え、ある程度心身が安定してきたあなたが、社会復帰に向けて最終的なコンディションを整えるための、非常に重要な期間です。
決して焦る必要はありません。
ここでの丁寧な準備が、この後のスムーズな復帰と再発防止に直結します。
ステップ1:生活リズムの再建
休職中に安定してきた生活リズムを、今度は「通勤」や「勤務」を意識したレベルに、もう一段階引き上げていきましょう。
「毎朝決まった時間に起きて、日中は図書館やカフェで過ごしてみる」
「週に数回、決まった時間に外出する習慣をつける」
といったように、少しずつ活動量を増やし、体力と集中力を養っていきます。
ステップ2:「リワーク支援」の活用
「いきなり職場に戻るのはハードルが高い…」
そう感じるのは、ごく自然なことです。
そんな時に頼りになるのが、公的な復職支援プログラムである「リワーク支援」です。
リワークは、主治医に最終的な「復職可能」の意見書を出してもらうための、非常に有効なリハビリテーションです。
実際の職場に近い環境で、軽作業やグループワークなどを行いながら、通勤やオフィスワークの感覚を少しずつ取り戻していきます。
ステップ3:主治医との連携と最終判断
復職に向けたプロセスにおいて、主治医の役割は「あなたの心身が、再び働ける状態にあるか」を医学的に判断し、意見書(診断書)を作成することです。
しかし、復職の最終的な決定権を持つのは、会社側です。
主治医の意見書をもとに、会社の産業医や人事担当者などが面談を行い、「本当に業務を遂行できるか」「安全に配慮できるか」を判断し、最終的に復職の可否が決まります。
(※中小企業など、産業医がいない場合は、主治医の診断書がより重視される傾向にあります)
【準備期のつまずきポイント】
- 生活リズムを整えようと、いきなり運動や予定を詰め込みすぎて疲弊してしまう。
- 主治医に「大丈夫です」と言い過ぎて、本当の体調や不安を伝えきれない。
Next Step
準備期のより詳しい過ごし方や、リワーク支援の具体的な活用法については、後日公開予定の記事で詳しく解説します。
フェーズ[2]【調整期】会社と“協力”して円滑な復帰を目指す
主治医から復職可能との意見書が出たら、いよいよ会社との具体的なコミュニケーションが始まります。
不安に感じるかもしれませんが、ポイントを押さえて準備すれば、過度に恐れる必要はありません。
「戦う」のではなく、会社と「協力して」スムーズな復帰を目指す姿勢が大切です。
復職面談で必ず話すべきこと・準備チェックリスト
多くの場合、休職中は会社(上司や人事)や産業医と定期的な面談が設定されています。
復職の意向は、その面談の場で、必要な書類を提示しながら伝えるのが最も一般的です。
事前に話すべきことを整理し、準備万端で臨みましょう。
復職面談 準備チェックリスト
- 主治医の意見書(診断書)(復職可能であることの医学的見解)
- 現在の体調と回復状況(正直に、具体的に伝える)
- リワーク支援の参加報告書など(作業療法士などの第三者による所見)
- うつ病の再発防止策(自分なりに考えていることを伝える)
- 復帰後の働き方について(会社の制度を確認した上で、希望を伝える)
働き方の調整は「慣らし勤務」の活用から
復職後、いきなり休職前と同じ100%のパフォーマンスで働くのは、現実的ではありません。
多くの会社では、就業規則で「慣らし勤務(試し出勤)」の制度が定められています。
まずは、あなたの会社の制度(時短勤務の期間、給与の扱いなど)をしっかりと確認し、その制度を最大限に活用しましょう。
【調整期のつまずきポイント】
- 復職を焦るあまり、会社に「何でもできます」と伝えてしまい、配慮の機会を逃す。
- 会社の制度をよく確認せず、復帰後の給与や待遇面で認識のズレが生じる。
Next Step
復職面談で想定される具体的な質問への回答例や、有利な条件を引き出すための伝え方については、後日公開予定の記事で詳しく解説します。
フェーズ[3]【復帰後】「もう繰り返さない」ための再発予防策
無事に復職が決まった後、ここからが本当のスタートです。
うつ病は再発しやすい病気だからこそ、「もう繰り返さない」ためのセルフケアと働き方の工夫が何よりも重要になります。
慣らし勤務の期間:「60点」で自分にハナマルを
まずは、慣らし勤務の期間中です。
この期間は、意識的に「頑張らない」ことを頑張る期間だと心得てください。
「休んだ分を取り戻さないと」「周りに迷惑をかけられない」という気持ちが、再発の引き金になります。
- 60点の出来で満足する: 完璧を目指さない。
- 定時で必ず帰る: 会社の安全配慮義務の観点から、残業が制限されることがほとんどです。
- 疲れたら正直に伝える: 無理をせず、小さなSOSを出す練習をする。
私の経験上、この「頑張らない練習」が一番難しく、一番大切でした。「まあ、いっか」を口癖にするくらいが、ちょうど良いかもしれません。
この期間のあなたの仕事は、まず「職場環境に再び慣れる」こと。
それだけで十分です。
周囲とのコミュニケーション術:病気のことをどこまで、どう話すか
職場の同僚に、病気のことをどこまで話すかは、非常に悩ましい問題ですよね。
結論から言うと、全員に話す必要はありません。
まずは、直属の上司や業務で密接に関わる数名に限定し、「主治医や産業医から、こういう配慮をしてもらうよう言われています」と、客観的な事実として伝えるのがおすすめです。
自分を守るためのセルフケアと「心のSOSサイン」の見つけ方
復職後の生活に慣れてくると、つい無理をしがちになります。
そうなる前に、自分なりの「心のSOSサイン」を把握しておくことが大切です。
- 寝つきが悪くなった、途中で目が覚める
- 好きだったこと(趣味など)が楽しめなくなった
- 食欲がない、または過食気味になる
- 小さなことでイライラしたり、涙もろくなったりする
こうしたサインに気づいたら、それは「少し休んで」というあなたの心からのメッセージです。
早めに主治医に相談するなど、自分を労わる行動を最優先してください。
【復帰後のつまずきポイント】
- 「迷惑をかけられない」という思いから、自分に合わない飲み会や残業を断れない。
- 少し調子が良くなると、自己判断で通院や服薬をやめてしまい、再発のリスクを高める。
Next Step
復帰後に実践できる具体的なセルフケア方法や、ストレスに上手に対処するためのテクニックについては、後日公開予定の記事で詳しく解説します。
【もう一つの道】「復職しない」という前向きな選択肢
ここまで復職への道筋を解説してきましたが、忘れないでほしい大切なことがあります。
それは、「復職だけが、唯一の正解ではない」ということです。
あなたの心が「NO」と言っているなら、それが答え
もし、休職の原因となった職場環境や人間関係が根本的に変わっていないのであれば、そこに無理して戻ることは、再発のリスクを自ら高めることになりかねません。
「会社に戻ることを考えると、胸が苦しくなる」
そんな風に、あなたの心が「NO」と叫んでいるのなら、その声に耳を傾ける勇気も必要です。
あなたが今の職場を離れることを選んでも、それは「逃げ」ではありません。
むしろ、あなたの心と未来を守るための、大切な戦略的休養なのです。
退職を決断する前に:公的制度で生活を守る知識
退職を考える上で、一番の不安は「お金のこと」だと思います。
でも、安心してください。
すぐに生活が困窮しないよう、私たちを守ってくれる公的な制度があります。
【知っておきたいポイント】傷病手当金と失業保険の活用法
- 傷病手当金:退職後も、条件を満たせば継続して受給できる場合があります。これは「働けない状態」の生活を支える制度です。
詳しくはこちら(協会けんぽ) - 失業保険(雇用保険):これは「働ける状態にあるが、仕事が見つからない」期間の生活を支える制度です。うつ病などが理由で退職した場合、「特定理由離職者」と認定され、給付制限なしで受給できる場合があります。
詳しくはこちら(ハローワーク) - 失業保険の受給延長:もし退職後も療養が必要で「まだ働けない」状態なら、失業保険の受給期間を最大3年間延長する手続きができます。これにより、まずは傷病手当金を受給し、働ける状態になってから失業保険を受給するという、途切れのない受給が可能になります。
詳しくはこちら(厚生労働省)
※注意:傷病手当金と失業保険を同時に受給することはできません。
これらの制度を正しく理解することで、経済的な不安を和らげ、冷静に将来を考える時間を確保できます。
うつ病経験を「強み」に変える転職活動の進め方
「うつ病になった自分を雇ってくれる会社なんて、あるんだろうか…」
そんな心配は無用です。
うつ病を経験したからこそ、あなたはストレス管理能力や、他者の痛みへの共感力など、多くのものを得たはずです。
あなたの経験を「弱み」ではなく、唯一無二の「強み」として捉え、あなたらしく働ける新しい場所を探すという道も、素晴らしい選択肢の一つです。
Next Step
退職を決断した場合の具体的な手続きや、うつ病の経験を強みに変える転職活動の進め方については、後日公開予定の記事で詳しく解説します。
よくあるご質問:復職にまつわる不安
- Q. 復職後に、またうつ病が再発するのが怖いです…。
- A. その不安は、とても自然な感情です。大切なのは、完璧を目指さないこと。「60点主義」で自分を許し、この記事で紹介した「心のSOSサイン」に早めに気づいて対処することです。再発予防は「一度きりの対策」ではなく「継続的なセルフケア」だと考え、焦らず自分を労わり続けていきましょう。
- Q. 復職に失敗したら、もう終わりなのでしょうか?
- A. 決して、そんなことはありません。もし万が一、復職がうまくいかなくても、それはあなたに合う職場ではなかったというだけの話です。傷病手当金や失業保険といったセーフティネットを活用しながら、あなたらしく働ける別の道(転職や、働き方を変えるなど)を探す時間は十分にあります。「復職」は、数ある選択肢の一つに過ぎません。
最後に:道は一つじゃない。あなたの「次の一歩」を見つけるために
この記事では、うつ病からの復職を目指すためのロードマップを解説してきました。
最後に、あなたの今の気持ちに合わせて、「次の一歩」を考えてみましょう。
あなたの「次の一歩」は?
-
もし、まだ心と体が十分に休まっていないと感じるなら…
焦る必要はまったくありません。
今は、無理に復職のことを考えるのではなく、「上手に休む」ことに集中しましょう。
こちらの記事が、あなたの心を軽くするヒントになるかもしれません。 -
もし、復職への具体的なステップを一つ進めたいと感じるなら…
公的なリハビリ支援である「リワーク」について、少しだけ調べてみるのはいかがでしょうか。
すぐに利用しなくても、知っておくだけで心の選択肢が一つ増えますよ。
(※リワーク支援の詳細は、後日公開予定の記事で詳しく解説します)
復職する道も、しない道も、どちらも間違いありません。
最も大切なのは、あなたが自分自身を責めず、あなたの心と体を一番に考えてあげること。
この地図が、あなたがあなたらしい働き方を見つけるための、小さな支えになれたら、これほど嬉しいことはありません。
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