「うつ病になんて、ならなければ良かった」
「失ったものばかりで、これからどうすればいいんだろう…」
今、あなたはそんな風に自分を責め、暗いトンネルの中で一人、光を探しているかもしれません。
痛いほど、その気持ちはわかります。
なぜなら、私自身が19年間、うつ病と共に歩む中で、何度も同じ絶望を味わってきたからです。


この記事では、私がうつ病によって失ったもの、そして、その苦しみの先に見つけ出した「光」について、正直にお話しします。
あなたの苦しい経験が、決して無駄なんかじゃない。
この記事が、そう気づくきっかけになればと心から願っています。
まずは、私がうつ病になって「失ったもの」の話
きれいごとを言うつもりはありません。
うつ病は、私の人生からたくさんのものを奪っていきました。
良かったことをお話しする前に、まずは私が失ったもの、つまり「悪かったこと」から正直にお伝えさせてください。
きっと、あなたも同じような痛みを抱えているはずです。
「また再発するかも」という見えない傷
寛解と再発を繰り返すたびに、心に「見えない傷」が刻まれていきました。
「また、あの暗闇に引き戻されるんじゃないか」
という不安は、今でもふとした瞬間に心をよぎります。
少し体調が悪いだけで「脳の病気かも?」「何か重い内臓の病気では?」と、あらゆる不調に過敏になってしまう。
これは、病気と懸命に闘ってきたからこその、
深い傷跡なのだと思っています。
心から笑い合えた友人との距離
うつ病になる前は、たくさんの友人に囲まれていました。
でも、病気になってから、その多くと疎遠になってしまいました。
原因は、友人たちが離れていったからではありません。
「元気じゃない自分を見せたくない」
「気を遣わせてしまうのが申し訳ない」
そんな私の勝手な思い込みが、自分から友人を遠ざけてしまったのです。
(→私の「勝手な思い込み」の正体について)
同窓会の知らせを見ても、笑顔で参加する自信がない。
これは、今も私が向き合い続けている課題の一つです。
それでも、うつ病が私に教えてくれた「7つのこと」
失ったものは、確かにあります。
その事実は、決して消えません。
でも、不思議なことに、うつ病になったからこそ得られたもの、見えるようになった景色もたくさんありました。
ここからは、うつ病が私に教えてくれた「良かったこと」をお話しします。
1. 本当の意味で「自分自身」を知れた
うつ病になって、私は初めて本気で自分自身と向き合いました。
カウンセリングや休職、復職、退職…。
その一つひとつの過程で、自分の性格、弱さ、考え方のクセを嫌というほど見つめ直すことになりました。
そして気づいたんです。
弱さだと思っていた部分が、実は自分だけの強さでもあったということに。
もしうつ病にならなければ、私は自分のことを何も知らないまま、ただ周りに合わせて生きていたかもしれません。
2. 人の痛みに心から寄り添えるようになった
心がめちゃくちゃになり、人生のどん底を味わったからこそ、他の人の痛みがわかるようになりました。
うつ病で苦しんでいる人はもちろん、病気や様々な事情で困難を抱えている人に対して、以前とはまったく見え方が変わったのです。
どんな言葉をかけ、どんな距離感で接するのがいいのか。
ときには、そっとしておくことが一番の優しさだと知りました。
(→当事者が語る「そっとしておく」の本当の意味)
本当の強さとは、人の弱さを知っていること。
病気が、そう教えてくれました。
3. 周りの人の「本当の優しさ」に気づけた
うつ病という病気には、いまだに偏見の目が向けられることもあります。
そんな中で、何も言わずにそばにいてくれた家族。
変わらない態度で接してくれた、数少ない友人。
私がどん底にいるときに支えてくれた人たちの優しさは、一生忘れることのない宝物です。
順風満帆なときには気づけなかった、人の温かさ。
それに気づけたのは、うつ病のおかげです。
4. 「当たり前の日常」が宝物だとわかった
朝、目が覚めること。
ご飯をおいしいと感じること。
散歩をして、季節の匂いを感じること。
うつ病になる前は、すべてが「当たり前」でした。
でも、その当たり前がどれほど尊く、幸せなことだったのかを、病気が教えてくれました。
今では、何でもない一日を無事に終えられただけで、「今日もよく頑張ったな」と自分を褒めてあげられるようになりました。
5. メンタルヘルスの知識が専門家レベルになった
自分の病気を治したくて、書籍やネットで情報を読みあさるうちに、いつの間にかメンタルヘルス全般の知識が豊富になっていました。
せっかく得た知識を形にしたいと思い、メンタルヘルス・マネジメント検定の資格も取得しました。
この知識は、自分自身を守るためだけでなく、同じように悩む誰かの力になるかもしれない、私の新たな武器になっています。
6. 自分にとっての「本当の幸せ」とは何かを考え抜いた
良い学校、良い会社に入ることが幸せだと信じて疑わなかった学生時代。
でも、うつ病になったことで、その価値観は根底から覆されました。
「私はどんな生き方をしたいんだろう?」
「私にとって、本当の幸せって何だろう?」
まだ明確な答えは見つかっていません。
でも、「人生は一度きり。誰かの価値観のためじゃなく、自分の心に従って生きていきたい」と強く思うようになりました。
7. この場所で、同じ悩みを持つ"あなた"と出会えた
そして、一番大きな「良かったこと」は、これかもしれません。
自分の経験を発信しようと始めたこのブログで、今こうして画面の向こうにいる「あなた」と出会えたことです。
私のつらかった過去の経験が、誰かの心を少しでも軽くできるかもしれない。
そう思えたとき、私の過去は、ただのつらい記憶ではなく、未来を照らす「価値」に変わりました。
この出会いこそ、うつ病がくれた最高の贈り物だと、今は心から思っています。
よくあるご質問
「良かった」と思えるようになるまで、どれくらいかかりましたか?
正直にお答えすると、何年もかかりました。特に症状が重い急性期や、再発を繰り返していた時期は、「うつ病になって良かったことなんて1ミリもない」と本気で思っていました。
少しずつ「これも経験だったのかも」と思えるようになったのは、退職してストレスのない生活を送れるようになり、自分の人生を客観的に振り返れるくらいの余裕が生まれてからです。焦る必要はまったくありませんよ。
今でも「うつ病にならなければ良かった」と思うことはありますか?
はい、今でも思うことはあります。特に、友人関係やキャリアのことを考えると、「もし、あのとき発症していなければ…」という"if"を考えてしまうことも。でも、それはそれとして受け止めています。
大切なのは、過去を悔やみ続けることではなく、病気を経験した今の自分で、どう未来を生きていくかだと考えています。失ったものに目を向ける日があってもいい。でも、得られたものも確かに胸にある。そう信じて、一歩ずつ進んでいます。
あなたの経験は、決して無駄じゃない
うつ病になって良かったこと、そして悪かったこと。
私の19年間の体験談をお話ししてきました。
もし、今あなたがうつ病の渦中にいて苦しんでいるなら、「良かったことなんて信じられない」と思うのが当然です。
どうか、無理に前向きになろうとしなくて大丈夫です。
ただ、これだけは覚えておいてほしいのです。
あなたが今感じている痛み、苦しみ、そして流した涙は、決して無駄にはなりません。
その経験が、いつかあなた自身の心を支え、誰かの痛みに寄り添える、深い優しさに変わる日が来ると、私は信じています。
長いトンネルの先には、必ず光が待っています。
焦らず、あなたのペースで。一歩ずつ、進んでいきましょうね。

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私は75歳の元気?老人ですが30年間に2度鬱病を体験しました。ななころさんの様に鬱病を体験する事により貴重な体験を沢山しました、人生を諦め睡眠薬自殺をし,この世から居なくなりそうな状態の時もありましたが私の場合は周りの方に恵まれたのかも知れませんが常にピンチになっても諦めず乗り越えてきました。一度目の鬱病の時は環境が変わることで鬱病から抜ける事ができましたが、まだ鬱病という言葉もなく鬱病になる方の特徴の完全主義的考えを変える認知行動療法というものもない為30年後2度目を発症してしまいましたが、今は認知療法を学んだお蔭で、物事を客観的に考える事ができるようになりストレスを上手く乗り越える事が出来るようになりました。今は鬱病病体験者でないと味わえない苦しい体験をした為に、ありきたりの事にも心から感謝できるようになり鬱病になった事に感謝さえしています
くぼとちおさん、コメントありがとうございます。
私より先輩で、まだうつ病の解明がされていない時に経験されたのですね。
今ではだいぶ治療法や世間の認知度があがってきました。
やはり諦めずに向き合えば、くぼとちおさんのようにうつ病に感謝できるようになるのですね。
私はまだ寛解には至っていませんが、少しでもその域にたどり着けるようにしたいです。
ぜひ、また遊びにきてください。