【書籍レビュー】うつ病は心の弱さが原因ではない ウイルス原因説から見えるうつ病治療の未来

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「うつ病は心の弱さが原因ではない」の書籍レビュー

書籍の情報

  • タイトル:うつ病は心の弱さが原因ではない ウイルス原因説から見えるうつ病治療の未来
  • 監修・原作:近藤一博
  • 漫画・原作:にしかわたく
  • 形式:漫画、文章
  • 出版日:2021年2月17日
  • 出版社: 河出書房新社
  • ページ数:144ページ
  • 読了目安時間:2~3時間

あらすじ

うつ病はの原因はウイルスである!!
世界最新「うつ病治療」の最前線──
2020年にアメリカの科学誌『アイサイエンス』に掲載され、国内外で大きな注目を集めている論文『うつ病の原因遺伝子発見』。本書は、その書き手である慈恵医大の近藤一博教授が原作を担当し、自らのうつ病研究の成果をマンガの形にした、他に例のない「最先端医療科学コミック」である。  世間のほとんどの人が常識だと思っている「うつ病=セロトニン不足」という認識は、実は根本的に間違っていた。それに代わり、新たなうつ病治療の基礎となることが期待されているのが、近藤教授が提唱する「ウイルス原因説」。ウイルスがうつ病を引き起こす原因であるとするこの驚くべき新説は、果たしていかなる内容で、どのようにして生まれたのか?  物語の主人公・女性編集者の藪中まよいは、うつ病の当事者で、周囲の人間の無理解と偏見に悩んでいた。そんな彼女が近藤教授に導かれ、古代ギリシャまでさかのぼるうつ病研究の歴史を振り返り、ウイルス原因説の登場によって、これからうつ病治療がどう変化して行くかを考察していく。そして「うつ病とは脳の病気であり、本人の心の弱さとは関係がない」ことを知っていくのだった…。

出典:河出書房新社 うつ病は心の弱さが原因ではない

読んでみた感想・書評

うつ病の原因はウイルスだった!と聞いたら、あなたはどう思いますか?

そんな馬鹿なと思う人もいるでしょう。
しかし、この本の監修である近藤一博教授のうつ病ウイルス説は、2020年に科学誌に掲載されました。
そのニュースを見たことがある人はいるかもしれません。

そんな新説をこの本ではコミカルに、そして専門的にマンガ形式でストーリーが展開していきます。
心の問題派」VS「脳の病気派」が2000年続いてきた過去。
脳のセロトニン不足は30年前の学説で「うつ病界の天動説」になっていること。

次々出てくる話に、にわかに信じられずとも、ページをめくるスピートはあがっていきました。

そしてついに出てきたウイルス説の話。
誰もが持っているヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)、それが作り出すタンパク質(SITH-1)。
この値を計測するとうつ病患者の値が高いことが発見されました。
原因がわかれば、治療薬だけでなく、うつ病になりやすい遺伝子を持っている人の予防ができる。
簡単にいうとそういう理論です。

今まで色んなうつ病関連書を読んできましたが、新しい説に興奮を覚えました
まだ研究段階ですが、これはもし真実であれば、人類のうつ病との戦いに大きな変化が現れることは間違いないでしょう

共感ポイント

読み終わって思ったことは、「この専門的な理論をよくわかりやすく描けたなぁ」と感心しました。
マンガ形式だからというのもありますが、ストーリー展開がとにかく面白い!
原作は近藤一博氏、にしかわたく氏の2名ですが、話の展開を相当工夫したのがわかります。

本作では、ウイルス説理論を全面に出さずに、私やあなたが思っている疑問に丁寧に答えてくれます。

  • うつ病はセロトニン不足なんじゃないの?
  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を飲めば治るんじゃないの?
  • 認知行動療法をすれば効果はあるんじゃないの?

私がこのブログで書いている薬物療法、心理療法について、本書ではその効果や問題点に触れています。
自分に当てはめてみると「だから長期化しているのかも?」と思った部分もありました。

最後に「ストレスと不安」について触れています。
両者とも悪いイメージがありますが、これがあるから人間は進化できたと述べています。

まだ研究段階ではありますが、このウイルス説が証明されれば、いまうつ病で苦しんでいる人の大きな救世主になるかもしれません。
そんな期待を込めて、この本を紹介しようと思いました。

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