【体験談】子供が朝起きられないのは病気?起立性調節障害(OD)と親が家庭でできるサポート

起立性調節障害の記事アイキャッチ画像。「朝、起きられない我が子に『どうして?』と感じているあなたへ」「その苦しみは『怠け』じゃない」というテキストと、親が子供の手を優しく包み込む手書き風イラストが描かれている。温かいクリーム色を基調とした、安心感を与えるデザイン。
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この記事は、お子さんが朝起きられずにお悩みの親御さんに向けて書いています。

  • 子供が朝起きられないのは"怠け"ではなく「起立性調節障害(OD)」かもしれないこと
  • ODの症状や原因、家庭でできるセルフチェックの方法
  • 親として今日から始められる具体的なサポート方法
  • 当事者"だったかもしれない"私の体験談と、親御さんへのメッセージ

朝、何度起こしてもぐったりとして起きられない我が子。
学校に遅刻する日々が続き、「どうしてうちの子だけ…」と頭を抱えてしまう。

「もしかして、怠けているだけなんじゃないか?」
そんな不安と焦りが、ついお子さんを責める言葉になってしまうこともあるかもしれません。

そのお気持ち、痛いほどよく分かります。
実は、私自身も学生時代、同じように朝起きられずに苦しんだ経験があります。

この記事は、「怠けている」という周囲の誤解に傷つき、原因がわからず親子で困惑した、あの頃の私と私の母のような方々に寄り添う気持ちで書いています。

大丈夫です。あなたも、そしてお子さんも、決して一人ではありません。
この病気の正しい知識と、親としてできることを一緒に学んでいきましょう。

もしかして?と思ったら知ってほしい「起立性調節障害(OD)」の基本

まず何より知っていただきたいのは、お子さんの症状は「怠け」や「甘え」といった精神論ではなく、自律神経の働きが関係する身体の病気だということです。

起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:以下、OD)は、思春期に発症しやすく、立ち上がったときに血圧や心拍の調整がうまくいかなくなり、脳への血流が低下してさまざまな不調を引き起こします。

日本小児心身医学会によると、ODの有病率は中学生の約10%にみられ、決して珍しい病気ではありません。重症の場合、不登校の約3〜4割にODが併存するとも言われており、その後の学校生活や社会生活に大きな支障をきたすこともあります。

出典:日本小児心身医学会 起立性調節障害

起立性調節障害(OD)の主な症状|お子さんのサインを見逃さないで

ODの症状は多岐にわたりますが、特に親御さんが気づきやすい代表的なサインは以下の通りです。症状は午前中に強く、午後に軽減する傾向があります。

  • 朝、なかなか起きられず、午前中は特に調子が悪い
  • 立ち上がったときに立ちくらみや、めまいを訴える
  • 少し動いただけでも動悸や息切れがする
  • 顔色が悪く、青白く見えることが多い
  • 食欲がなく、特に朝食を食べたがらない
  • 頻繁に頭痛や腹痛を訴える
  • 乗り物酔いをしやすくなった

もしお子さんに複数の症状が見られる場合、それは心の問題だけでなく、身体がSOSサインを出しているのかもしれません。

ODの原因は?思春期に自律神経が乱れやすい理由

ODの根本的な原因は、体を活動的にする「交感神経」と、リラックスさせる「副交感神経」のバランスが崩れること(自律神経の乱れ)にあります。思春期にこのバランスが崩れやすいのには、主に以下のような理由が挙げられます。

起立性調節障害の3つの原因を示す図解。水彩画風の緑・オレンジ・青の3つの円が重なり合い、それぞれに「体の急成長」「環境のストレス」「自律神経の未熟さ」と書かれている。

  1. 体の急激な成長:身長が急速に伸びることで、心臓や血管の成長が追いつかず、脳への血流を適切にコントロールしにくくなります。
  2. 自律神経の未熟さ:ホルモンバランスが大きく変動する思春期は、自律神経系そのものがまだ発達途上で不安定です。
  3. 心理社会的ストレス:友人関係、学業、家庭環境など、お子さんを取り巻く心理的なストレスが自律神経の働きに直接影響を与えます。

これらの要因が複雑に絡み合い、ODの症状として現れるのです。

家庭でできるODセルフチェックと受診の目安

日本小児心身医学会の診断法によると、まず家庭で症状を確認することから始まります。一度セルフチェックをしてみましょう。

ODセルフチェックリスト

以下の症状のうち、3つ以上当てはまるか、あるいは2つ以上でも症状が強ければODが疑われます。

  1. 立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
  2. 立っていると気分が悪くなる、ひどいときは倒れる
  3. 入浴時や、嫌なことを見聞きしたときに気分が悪くなる
  4. 少し動くと動悸、あるいは息切れがする
  5. 朝なかなか起きられず、午前中調子が悪い
  6. 顔色が青白い
  7. 食欲不振
  8. 腹痛をときどき訴える
  9. 倦怠感、あるいは疲れやすい
  10. 頭痛
  11. 乗り物に酔いやすい

出典:日本小児心身医学会 起立性調節障害

【重要】このチェックはあくまで目安です。ODが疑われる場合や、お子さんが学校生活などで大きな困難を抱えている場合は、必ずかかりつけの小児科、あるいは思春期外来などの専門医にご相談ください。

親ができる3つのサポート|家庭で起立性調節障害のお子さんを支える方法

ODの対応で最も大切なのは、医療機関での治療と並行して行う家庭でのサポートです。ここでは、親御さんが今日から実践できる3つのサポートをご紹介します。

親ができるサポートの3本柱
  1. 生活のサポート:身体のリズムを整える環境づくり
  2. 環境のサポート:心身のストレスを和げる工夫
  3. 心のサポート:何よりも大切な「理解」と「共感」

1. 生活のサポート

身体のリズムを少しずつ整えるための工夫です。無理強いはせず、できることから試してみましょう。

  • ゆっくり起こす:朝は急に体を起こさず、頭を下げながらゆっくり起き上がるように声をかけましょう。
  • 水分と塩分を意識:血圧を保つために、1日1.5〜2リットルの水分と、普段より少し多め(+3g程度)の塩分摂取が推奨されています。
  • 軽い運動:日中の散歩(30分程度)など、無理のない範囲での運動は、筋力低下を防ぎ、自律神経の働きを整える助けになります。
  • 長時間の起立を避ける:朝礼などで立ちっぱなしになる状況は症状を悪化させやすいです。可能であれば学校に相談し、配慮をお願いしましょう。

2. 環境のサポート

お子さんを取り巻くストレスを少しでも減らすことが、回復への近道になります。

  • 学校との連携:担任の先生にODについて説明し、遅刻や欠席への理解、体育の見学、テスト時間の配慮などを相談してみましょう。診断書があれば、よりスムーズに連携できます。
  • 家庭内の対話:お子さんが何に悩んでいるのか、安心して話せる時間を作りましょう。「学校に行かなければ」というプレッシャーが症状を悪化させることもあります。話を聞くだけでも、お子さんの心は軽くなります。

3. 心のサポート(最重要)

これが最も大切で、そしてあなたにしかできないサポートです。

  • 「怠け」と決めつけない:何度もお伝えしますが、本人は誰よりも起きたいのに起きられないのです。その苦しみをまず受け止めてあげてください。
  • 他人と比べない:「〇〇ちゃんはちゃんと学校に行っているのに」という言葉は、お子さんを深く傷つけ、追い詰めてしまいます。
  • 焦らせない:「いつになったら治るの?」という言葉は禁句です。回復のペースは人それぞれ。長い目で見守る姿勢が、お子さんにとって最大の安心材料になります。

体験談|原因がわからず親子で困惑した、あの頃

ここからは、私自身の体験談をお話しします。

今から30年ほど前の当時は、まだ「起立性調節障害」という言葉すらほとんど知られていませんでした。
そんな時代に高校生だった私は、まさにODの症状を体現しているかのようでした。朝は鉛のように体が重く、母に何度起こされても起き上がれない。午前中は常に倦怠感と頭痛があり、授業に集中できませんでした。

当然、遅刻や欠席は日常茶飯事です。

当時、私の母はとても困惑していたと思います。
決して私のことを「怠けている」と頭ごなしに叱ることはありませんでしたが、原因がわからないため、どうサポートすれば良いのか分からなかったのです。

朝は食欲がないため、消化によい朝食を作ってくれたり、早く寝るように促してくれたり。母なりに一生懸命サポートしてくれましたが、私の体調は一向に上向かない。
私自身も、「なぜ自分はみんなと同じようにできないんだろう」と自己嫌悪に陥り、母に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

もしあの時、親子でこの病気の存在を知っていたら。
「あなたのせいじゃないんだよ」という知識が一つあるだけで、あの先の見えないトンネルのような日々は、もう少し明るいものになっていたかもしれません。

(ちなみに私は成人後、「概日リズム睡眠障害」と診断されました。症状は似ていますが原因は異なります。だからこそ、専門医による正しい診断が重要なのです)

よくあるご質問(FAQ)

診断書を提出するのが最も有効です。また、日本小児心身医学会のウェブサイトには、学校関係者向けにODを解説する資料も掲載されています。そういった客観的な資料を提示しながら、担任の先生や養護教諭の先生に相談してみましょう。

ODの回復には時間がかかります。特に学校を長期欠席するような重症例では、社会復帰に2〜3年かかることもあります。焦る気持ちは痛いほど分かりますが、まずはお子さんの心と体を休ませることが最優先です。必要であれば、心理療法(カウンセリング)の併用も検討し、親子だけで抱え込まず専門家を頼りましょう。

まとめ:あなたもお子さんも、一人で抱え込まないで

子供が朝起きられない日々は、親にとっても辛く、孤独な戦いです。
しかし、この記事を通して、その苦しみの正体が「怠け」ではなく「OD」という病気かもしれないこと、そして、親としてできるサポートがたくさんあることをご理解いただけたなら幸いです。

大切な3つのポイント

  1. ODは「怠け」ではなく、誰にでも起こりうる身体の病気です。
  2. 家庭でのサポートで最も大切なのは、お子さんの苦しみを理解し、焦らず見守ることです。
  3. セルフチェックでODが疑われたら、親子だけで悩まず、必ず専門医に相談しましょう。

何より大切なのは、お子さんの苦しみに寄り添い、「あなたの味方だよ」と伝え続けること。

回復には時間がかかりますが、親御さんの正しい理解と家庭でのサポートが、お子さんの確かな力になります。
この記事が、悩めるあなたと、そして大切なお子さんの明日を少しでも明るくする一助となることを、心から願っています。

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