まずは知っておきたい「うつ病」の基本的な症状
うつ病と他の病気をくらべる前に、まずは基本となる「うつ病」の症状を知っておきましょう。
一般的には、下のような症状が2週間以上、ほとんど毎日続く状態をいいます。(出典:こころの情報サイト|国立精神・神経医療研究センター)
- 一日中気分が落ちこんでいる、ゆううつな気持ちになる
- 今まで楽しめていたことに、興味がわかない
- 食欲がなかったり、逆に食べ過ぎたりする
- なかなか眠れなかったり、逆に寝すぎたりする
- 話し方や動きがゆっくりになる、またはイライラして落ち着かない
- 疲れやすく、何もする気力がない
- 「自分はダメだ」と責めたり、自分に価値がないと感じたりする
- 集中できず、物事を決められない
- 「消えてしまいたい」とくり返し考えてしまう

※これはあくまで、私の個人的な感覚を言葉にした比喩表現です。
うつ病の代表的な2つのタイプ
「うつ病」とひとことで言っても、症状の出かたによっていくつかのタイプに分けられます。ここでは代表的な2つのタイプを紹介しますね。
一般的にイメージされるうつ病(定型うつ病)
真面目で責任感が強く、几帳面な性格の人がなりやすいと言われてきたタイプです。
- 何に対しても興味がわかず、気分が落ちこんでいる
- 特に朝方に落ちこみが激しい
- 食欲がなく、体重が減る
- 眠りが浅く、朝早くに目が覚めてしまう
- 自分を責める気持ちが強い
近年注目されているタイプ(非定型うつ病)
「新型うつ」と呼ばれることもあります。先ほどのタイプとは少し違う特徴があります。
その他にも、こんな特徴が挙げられます。
- 食欲が増して、特に甘いものが食べたくなる
- いくら寝ても眠い、一日中寝てしまう
- 体が鉛のように重く、だるく感じる
- 他の人のささいな言葉に、ひどく傷ついて落ちこむ
※これらの特徴は一例で、症状の出かたには個人差があります。


その他、特定の状況で起こるうつ病
ここまで紹介したタイプの他に、特定の季節やライフイベントがきっかけとなって起こるうつ病もあります。
例えば、秋から冬にかけて気分が落ちこむ「冬季うつ病」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
一目でわかる!うつ病と“間違えやすい”こころの病気【比較一覧表】
うつ病にはタイプがある一方で、症状が似ていて“間違えやすい”他の病気もたくさんあります。
代表的なものを一覧表にまとめました。あくまで目安として、全体像をつかむ参考にしてください。
| 病名 | 主な原因・きっかけ | 気分の波 | 当事者から見た感覚(一例) |
|---|---|---|---|
| うつ病 (定型・非定型など) | ストレス、環境の変化、脳の働きなど、様々な要因が重なる | 持続的な気分の落ちこみ(タイプにより反応性の違いあり) | 「世界から色が消えたみたい」 「常に重い鎧を着ている」 |
| 適応障害 | はっきりとしたストレス(例:仕事、人間関係) | 原因から離れると、良くなることが多い | 「あの場所に行ければ、普通でいられるのに…」 |
| 双極性障害 (躁うつ病) | 脳の機能的な特性などが関係していると考えられている | 気分の落ちこみ(うつ状態)と、高ぶり(躁状態)をくり返す | 「絶望の底と、根拠のない万能感が交互にやってくる」 |
| 不安障害 | 過度な不安や恐怖が、症状の中心 | 特定の状況や対象への、強い不安・恐怖が主 | 「まだ起きてもいない未来のことが、不安でたまらない」 |
| 自律神経失調症(※) | ストレス、不規則な生活など | 気分の浮き沈みより、体の不調が目立つことが多い | 「病院で検査しても、どこも悪くないと言われる…」 |
| 大人の発達障害 (ASD/ADHD) | 生まれつきの脳の働きの特性 | 気分の波は、二次的に起こることが多い | 「昔からずっと、周りと同じようにできなくて生きづらい」 |
※自律神経失調症は、医学的には正式な病名として扱われない場合もあります。
【症状別】うつ病と似ている病気との違い
ここからは、それぞれの病気について、うつ病との違いをもう少しだけ詳しく見ていきましょう。
適応障害との違い|ストレスの原因が“はっきり”しているか
適応障害は、ある特定の状況や出来事が強いストレスとなり、心や体に不調があらわれる状態です。

双極性障害(躁うつ病)との違い|“元気すぎる時期”はなかったか
双極性障害は、気分がとても落ちこむ「うつ状態」と、気分が異常なくらい高ぶる「躁(そう)状態」をくり返す病気です。
例えば、こんな経験はありませんか?
- ほとんど眠らなくても平気で、ずっと活動し続けられた時期がある
- 「自分は何でもできる」と、根拠のない自信に満ちあふれていた
- いつもよりおしゃべりになり、人の話をさえぎってまで話してしまった

不安障害との違い|主役が“不安”か“気分の落ち込み”か
不安障害は、日常生活に影響が出るほどの強い不安や恐怖を感じる病気の総称です。

自律神経失調症との違い|体の不調が続いていないか
自律神経失調症は、ストレスなどで自律神経のバランスが乱れ、心や体にいろいろな不調があらわれる状態を指します。厳密には正式な病名ではなく、検査をしても異常が見つからない様々な不調をまとめた「状態」を指す言葉として使われることが多いです。

大人の発達障害との違い|困難さが“生まれつき”のものか
大人の発達障害は、生まれつきの脳の働きの特性によって、周りの人とのコミュニケーションや、仕事の進めかたなどで困難を感じやすい状態を指します。(出典:こころの情報サイト|国立精神・神経医療研究センター)

大切なのは、診断名よりも「今つらい」というあなたの気持ち
ここまで色々な病気との違いを見てきましたが、一番大切なことをお伝えします。
それは、診断名さがしに、こだわりすぎないでほしい、ということです。
診断名は、あなたの状態を理解して、合う治療法を見つけるための「手がかり」でしかありません。
一番大切なのは、病名が何であれ、「今あなたが、とてもつらい思いをしている」という事実です。
その気持ちを一人で抱えこまず、専門家につなげることが何よりも重要です。
専門の相談員さんが、あなたの状況に合ったサポートを一緒に考えてくれます。
まとめ:あなたの「つらい」気持ちは、あなただけの大切なサインです
今回は、うつ病のタイプと、症状が似ている病気との違いについて、お話ししました。
- うつ病には、いくつかのタイプがある
- うつ病と似た病気もたくさんあり、それぞれに特徴がある
- 自分で判断せず、必ず専門の医師に相談することが大切
- 診断名以上に、「今つらい」という自分の気持ちを認めてあげることが第一歩
あなたのその苦しみは、決して「気のせい」でも「甘え」でもありません。
この記事が、あなたが自分自身を理解して、適切なサポートにつながるための、ほんの小さなお守りになれたらと心から願っています。





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