「うつ病の治療は、まず休むことが大切」。
そう頭ではわかっていても、「何もしない自分はダメだ」「早く良くならなければ」と、焦りや罪悪感で休むこと自体がつらくなる…。
もしあなたがそう感じているなら、この記事はきっとお役に立てるはずです。
この記事は、うつ病治療の全体像を示した「うつ病回復への道筋」の3本柱のうち、土台となる「休養」について、私の19年以上の体験談を交えながら深く掘り下げていきます。
この記事でわかること
- 回復ステージごとの具体的な休養方法
- 体験談から学ぶ、よくある失敗とその防ぎ方
- 未来の自分を守るための、再発予防の考え方
休養とは、単に体を横たえることではありません。
回復のステージごとにその意味と役割は大きく変わります。
この記事を読めば、焦りや不安が和らぎ、「回復への安心感」が生まれていくはずです。
筆者のリアルな体験談も交えながら、未来のあなたを守るための「心と体を癒す積極的な休養」について、一緒に考えていきましょう。
うつ病の「休養」は3つのステージで意味が変わる
うつ病の回復過程は、一般的に3つのステージで考えられています。これは厚生労働省の情報サイト「こころの情報サイト」でも示されている考え方で、このステージを意識することが、ご自身の現在地と次の一歩を理解する上で非常に役立ちます。
※これは回復過程の一般的なモデルであり、期間や症状の波には個人差があります。
「休養」のあり方も、このステージに合わせて変化させていく必要があります。
結論から言うと、ステージごとの休養のテーマは以下のようになります。
ステージ別・休養のテーマ
- 急性期:「何もしない」ことが最高の治療
- 回復期:「焦らない」が次へのステップ
- 再発予防期:「元に戻ろうとしない」勇気が未来を守る
ここからは、各ステージで具体的にどう過ごすべきか、そして私がどんな失敗をしたのかを詳しくお話しします。
ステージ1:急性期|「何もしない」を許す勇気と休養のコツ
● この時期はどんな状態?
気力が全く湧かず、ベッドから起き上がることさえ困難な時期です。
私の場合も、一日中布団の中にいて、ただただ「仕事を休んでいる」という罪悪感だけで頭がいっぱいでした。
● どう過ごすべき?
このステージでの休養とは、医師の指導のもとで、「何もしない」時間も大切な治療だと受け入れることです。
罪悪感を抱く必要は全くありません。
休むことは、決して怠けではありません。
エネルギーが空になったバッテリーを、まずは充電することだけに集中しましょう。
急性期の過ごし方のポイント
- 食事:食欲がなければゼリー飲料やスポーツドリンクでOK。少しでも食べられるなら、出前やネットスーパーなどを活用し、作る・買いに行く負担をなくしましょう。
- 活動:スマホを眺める、音楽を聴く、眠るなど、その瞬間に「できそう」と感じることだけをすれば十分です。生活リズムを整えようと無理をする必要はありません。
- 心構え:「何もしないことも治療の一環」と割り切ることが大切です。ご家族と同居している場合は、その点を理解してもらうことが回復への大きな助けになります。
なお、希死念慮(消えてしまいたいという気持ち)が強い場合は、安全な環境で治療に専念できる「入院」も重要な選択肢です。
一人で抱え込まず、必ず主治医や信頼できる相談機関に打ち明けてください。
【体験談】振り返って思う、急性期の2つの反省点
当時の私は、休むことへの罪悪感から常に脳が休まらず、不安でいっぱいでした。
家族の支えで1〜2ヶ月かけて「休むことが治療なのだ」と受け入れられましたが、それまでは本当に苦しかったです。
そしてもう一つ、この時期に離婚という人生の大きな決断をしてしまいました。
「急性期は重要な決断を先延ばしにすべき」とよく言われますが、まさにその正反対のことをしてしまい、心にさらなる大きな負荷をかけてしまったのです。
ステージ2:回復期|焦らないリハビリと過ごし方のコツ
● どんな変化が訪れる時期?
少しずつエネルギーが溜まり、「外に出てみようかな」と思える日が増えてくる時期です。
しかし、気分の波はまだ大きく、活動できた翌日にどっと疲れてしまうことも少なくありません。
● どう過ごすのがポイント?
このステージの休養は、「焦らず、できることを少しずつ試す」リハビリ期間と捉えましょう。
ここで焦ってペースを上げすぎると、すぐにエネルギー切れを起こしてしまいます。
回復期の過ごし方のポイント
- 生活リズムを整える:まずは「朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴びる」ことから。少しずつ体内時計をリセットしていきましょう。
- 軽い運動を試す:5分〜10分の散歩から始めてみましょう。外の空気を吸うだけでも気分転換になります。疲れたらすぐに休むのが鉄則です。
- 好きなことを楽しむ:「休職中に楽しむのは不謹慎では?」と思うかもしれませんが、趣味や好きなことを楽しむのは、心のエネルギーを回復させるための大切な「治療」です。
- 次のステップを考える:必要に応じて、カウンセリングでストレスへの対処法を学んだり、リワーク(職場復帰のためのリハビリテーションプログラム)への参加を検討したりするのもこの時期です。
【体験談】目的を見失ったまま過ごした回復期
私はこの大切な時期に、生活リズムを整えられないまま、目的意識もなくリワークに通っていました。
昼夜逆転が続き、電車では常に爆睡。
「早く復帰しないと」という焦りだけが空回りし、本来やるべき「復職への訓練」が全くできていなかったのです。
この時期の過ごし方が、のちの再発につながったと今では痛感しています。
ステージ3:再発予防期|「元に戻ろうとしない」勇気と暮らしのコツ
● どんな目標を持つ時期?
症状が安定し、職場復帰など、元の生活に戻っていく時期です。
しかし、休んでいた期間のブランクもあり、体力も気力も以前と同じ状態ではありません。
● どうすれば再発を防げる?
ここでの目標は「病気になる前の自分に戻ること」ではありません。
ストレスに振り回されない新しい生活スタイルを身につけることです。
そのための「慣らし運転期間」としての休養を意識しましょう。
再発予防期の過ごし方のポイント
- ペースを意識的に落とす:復職直後は、軽減勤務(時短勤務など)から始めるのが一般的です。「早く元通りに」と焦らず、ゆっくり仕事に慣れていきましょう。
- こまめに休憩する:脳も筋肉と同じで、使わないとすぐに疲れてしまいます。疲れたと感じる前に、意識的に小休憩を挟むことが大切です。
- 正直に状況を伝える:「これくらいの仕事は大丈夫だろう」と無理は禁物です。負荷が強いと感じたら、上司や産業医に正直に伝えましょう。自分を大切にすることが、結果的に円滑な職場復帰につながります。
【体験談】焦りが招いた2度目の休職
最初の復職時、私は「早く元の自分に戻らなければ」と必死でした。
産業医の制止も聞かず「早く通常勤務に」と交渉し、常に体調不安を抱えながら、自分を騙し騙し働き続けました。
回復期に根本的な問題解決を怠っていたこともあり、結局、数年後に再休職。
再発予防期に「再発する」という大きなつまずきを経験しました。
この経験があったからこそ、回復には正しい知識と自分に合ったペース配分がいかに重要かを、身をもって学ぶことができました。
まとめ:休養とは、未来の自分を守るための「積極的な治療」です
ここまで読んでくださったあなたは、すでに回復への一歩を踏み出しています。
うつ病治療における「休養」とは、回復のステージごとに明確な目的を持った、極めて重要な治療法です。
この記事でお伝えしたポイントを、最後にもう一度確認しておきましょう。
ステージ別・休養のテーマ
- 急性期:「何もしない」ことが最高の治療
- 回復期:「焦らない」が次へのステップ
- 再発予防期:「元に戻ろうとしない」勇気が未来を守る
もし今、あなたが休むことをつらく感じているなら、それはあなたが真面目で、責任感の強い証拠です。
でも、今はその真面目さを「正しく休む」という治療に向けてみてください。
この地図を参考に、あなたのペースで一歩ずつ進んでいくことが、必ず回復への一番の近道になります。
治療の全体像をもう一度確認するこの記事で土台となる「休養」を学んだあなたが、次の一歩として治療の全体像を知ることは、回復への羅針盤を手に入れることにつながります。他の2つの柱(薬物療法・精神療法)との関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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