この記事でわかること
- 復職後に「頑張りすぎない」ための具体的な3つの工夫
- 会社のサポートを上手に活用し、再発を防ぐための考え方
- 今日からできるセルフケアと、心のSOSサインの見つけ方
- 罪悪感を手放し、安心して働き続けるためのヒント
はじめに:復職後の「また無理かも」という不安は自然なサインです
楽しかったわけではない。
けれど、どこか守られていた「慣らし勤務」の期間が、終わってしまった。
いよいよ本格的な日常が戻ってきた今、あなたは「これから頑張るぞ」という気持ちの裏側で、こんな言いようのない不安に襲われていませんか。
「また無理をして、心が折れてしまったらどうしよう…」
「周りの期待に応えようとして、空回りしてしまわないだろうか…」
その気持ち、痛いほどわかります。
復職直後の「頑張りすぎない練習」とはまた違う、本格復帰ならではのプレッシャーですよね。
でも、どうか安心してください。
その復職後の不安は、あなたの心と体を守るための大切なサインです。
この記事では、「頑張り」や「気合い」といった曖昧なものに頼るのではなく、具体的な「仕組み」と「習慣」によって、長く安定して働き続けるためのペース配分について、私の体験談を交えながら解説します。
この記事を読み終える頃には、再発への漠然とした恐怖が和らぎ、「これなら自分にもできそう」という具体的な安心感と、明日から実践できるヒントを手にしているはずです。
【結論】復職後の再発予防は「仕組み」で乗り越える
本題に入る前に、私が何度も体調を崩しながらたどり着いた、最も大切な結論からお伝えさせてください。
日々の小さなストレスを確実に受け流し、エネルギーの消耗を防ぐ「仕組み(システム)」を、仕事と生活の両方に作り上げることです。
一度仕組みを作ってしまえば、あとはそれに沿って動くだけ。
「頑張ろう」と意識しなくても、自然と無理のない働き方ができるようになります。
これから、その具体的な仕組み作りを一つひとつ見ていきましょう。
第1章:ゴール設定の再定義 ― 「パフォーマンスの波」を受け入れる
慣らし勤務中は「60点主義」を意識して、頑張りすぎない練習をしてきましたね。
本格復帰した今、その考え方をもう一歩進めてみましょう。
目指すのは、毎日100点を取ることではありません。
良い日もあれば、悪い日もあるのが当たり前。
その「波」があることを前提として、長期的に見て「安定飛行」を続けることが、今のあなたにとっての新しいゴールです。
私の体験談
「休んだ分を取り戻さなければ」という焦りから、私もかつては100点満点を目指していました。
会社は良くも悪くも、私を特別扱いしません。
残業も出張もある中で、何度も体調を崩しては突発的に休む日々。
毎年もらえる有給休暇は、すべて体調不良で使い果たし、「もう休める日がない」とカレンダーを眺めては絶望していました。
完璧を目指すことは、知らず知らずのうちに、あなたの心に大きなプレッシャーをかけてしまいます。
まずは「毎日が100点じゃなくていい」と、自分自身に許可を出してあげることから始めましょう。
第2章:再発を防ぐ仕事術 ― タスク管理・報連相・休息の工夫
ここでは、日々の業務の中で、あなたの心を守るための具体的な「仕事の仕組み」を3つご紹介します。
仕組み1:タスクの「見える化」
「あれもこれもやらなきゃ…」と、頭の中だけで仕事を抱えていませんか。
それは、脳のメモリを無駄遣いしている状態です。
- すべて書き出す:どんな小さな仕事でも、頭に浮かんだらすぐにメモ帳やツールに書き出す。
- 優先順位をつける:書き出したタスクの中から「今日やるべきこと」を3つだけ選ぶ。
- 「やらないこと」を決める:「これは明日でいい」「これは誰かにお願いできないか」と、手放す勇気を持つ。
私の体験談
私の場合は、中長期の予定はExcelで管理し、チームのリーダーと常に共有していました。
そして、短期的なタスクはポストイットに書き出し、終わったら剥がすという物理的な方法で「完了した」という達成感を得られるように工夫していました。
頭の中が整理されると、心にも余裕が生まれます。
まずは、目の前のタスクをすべて書き出すことから試してみてください。
仕組み2:コミュニケーションの「ルール化」
一人で抱え込まないことは、再発予防の鉄則です。
そのために、上司や同僚とのコミュニケーションを「ルール化」してしまいましょう。
- 定期的な1on1を提案する:週に一度、15分だけでも構いません。「業務の進捗と体調についてご報告する時間をいただけませんか?」と、あなたから上司に提案してみましょう。
- 相談の「型」を決めておく:「できません」と断るのが苦手なら、「〇〇までなら本日中に可能です。残りは明日でもよろしいでしょうか?」というように、代替案をセットで相談する「型」を用意しておくと、気持ちが楽になります。
会社とのコミュニケーションに不安がある方は、こちらの復職面談の準備記事も参考にしてください。
復職面談の時にもお伝えしたように、会社と「協力関係」を築くという意識が、ここでもあなたを助けてくれます。
仕組み3:意図的な「休息のスケジューリング」
「疲れたから休む」では、もう遅いかもしれません。
うつ病を経験した私たちは、エネルギーが枯渇する前に、意図的に休息を挟む必要があります。
- タイマーを使った時間管理術(ポモドーロテクニックなど)を活用する:「25分集中して5分休む」のように、作業時間と休憩時間をセットで管理する手法です。タイマーをかけることで、強制的に休むきっかけを作れます。
- 昼休みは必ずデスクを離れる:場所を変えることで、物理的に仕事から意識を切り離します。
私の体験談
復職当初、私はよく昼休みもデスクで過ごしてしまい、午後になると決まって集中力が切れていました。
意識して社食ではなく外へランチに行ったり、外の空気を吸いに行ったりするようにしてから、午後のエネルギー切れが格段に減ったのを覚えています。
休息は、サボりではありません。
午後のパフォーマンスを維持し、1日を安定して乗り切るための、重要な「仕事の一部」なのです。
第3章:再発予防につながる生活習慣 ― 睡眠・ルーティン・休息
仕事のパフォーマンスは、生活という土台の上に成り立っています。
ここでは、その土台を盤石にするための「生活の仕組み」を見ていきましょう。
仕組み1:仕事のオン・オフを切り替える「帰宅後ルーティン」
仕事のストレスや緊張を、家に持ち帰らないための工夫です。
自分なりの「ただいまの儀式」を作り、心身をプライベートモードに切り替えましょう。
【帰宅後ルーティンの例】
- 家に帰ったら、まず部屋着に着替える。
- 5分だけストレッチや瞑想をする。
- 好きな音楽を1曲聴き終えるまでは、スマホを見ない。
私の体験談
私には「仕事の愚痴は家庭に持ち込まない」というマイルールがありました。
その代わり、休憩中に会社の仲の良い先輩に話を聞いてもらい、ネガティブな感情はできるだけ会社の中で消化しきるようにしていました。
どんな些細なことでも構いません。
「これをしたら仕事はおしまい」というスイッチを決めておくことで、気持ちの切り替えがスムーズになります。
仕組み2:「睡眠の質」を最優先する
あらゆるセルフケアの中で、最も効果的で、最も優先すべきなのが「睡眠」です。
睡眠の質が、翌日のあなたの心身の状態をすべて決めると言っても過言ではありません。
【睡眠の質を高めるための具体的なアクション】
- 決まった時間にベッドに入る:平日も休日も、できるだけ同じ時間に就寝・起床し、体内時計を整える。
- 寝る1時間前は、PC・スマホを見ない:ブルーライトは脳を覚醒させてしまいます。代わりに読書や穏やかな音楽を楽しむ時間に。
- 夕方以降のカフェイン・寝る前のアルコールを控える:これらは睡眠の質を大きく下げる原因になります。
「よく眠れた」という感覚は、何よりの自信と安心感をもたらしてくれます。
仕組み3:「何もしない時間」を意図的に作る
「せっかくの休日だから、何か有意義なことをしないと…」
その考えが、あなたを疲れさせているのかもしれません。
時には、意図的に「何もしない時間」を作ることが、最高の休息になります。
スケジュール帳に「空白」と書き込んで、その時間は本当に何もせず、ぼーっと過ごしてみてください。
脳と心を完全に休ませる、大切な時間です。
第4章:自分だけの「再発の予兆リスト」を作る
再発を未然に防ぐには、不調のサインにできるだけ早く気づくことが重要です。
一般的なSOSサインに加えて、あなただけに現れる「予兆」をリストアップしておきましょう。
【私の予兆リストの例】
- 好きなお笑い番組を見ても、笑えなくなる。
- メールやDMの返信が、面倒に感じ始める。
- 身支度(髭剃りやヘアセット)が億劫になる。
- 無意識にため息が増える。
こうした微細な変化は、休職中につけていた「うつノート」を見返すと、ヒントが見つかるかもしれません。休職中の記録の付け方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
あなただけの予兆リストを作り、「これが出てきたら要注意」というサインを把握しておく。
それが、あなたを守るためのお守りになります。
【注記】
本項で解説した内容は、あくまで筆者個人の経験に基づく目安であり、医学的な診断基準ではありません。うつ病の再発サインについては、専門機関の情報サイトなども参考にしつつ、最終的には必ず主治医にご相談ください。
(参考)うつ病|こころの情報サイト(国立精神・神経医療研究センター)
まとめ:再発予防は、未来の自分への最高の贈り物
この記事では、復職後の再発を防ぎ、長く安定して働き続けるための「仕組み」について解説してきました。
ここまで紹介してきた仕組みはすべて、あなたが「頑張りすぎない」ための工夫です。
この記事のポイント
- ゴールは「安定飛行」:100点を目指すのではなく、パフォーマンスの波を受け入れる。
- 仕事の「仕組み」を作る:タスクの見える化、コミュニケーションのルール化、意図的な休息で心を守る。
- 生活の「仕組み」を整える:オン・オフの切り替え、質の良い睡眠、何もしない時間で土台を固める。
- 自分だけの「予兆」を知る:不調のサインに早く気づき、大事に至る前に対処する。
一つひとつは、本当に些細なことかもしれません。
しかし、この小さな習慣の積み重ねが、あなたの心をストレスから守る、何よりも強力な盾になります。
今日からすべてを完璧にやる必要はありません。
「これならできそう」と思えるものを一つだけ選んで、試してみてください。
その小さな一歩が、あなたの働きやすい未来を作る、最高の贈り物になるはずです。
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