これからの生活や、お金のこと。
仕事や、家族のこと。
病院の医師には聞けない、たくさんの悩み。
「こんなこと、迷惑かもしれない…」と、一人で抱え込んでいませんか?
病院には、あなたの「病気」を診る専門家とは別に、あなたの「暮らし全体」に寄り添ってくれる専門家がいます。
その名は「医療ソーシャルワーカー(MSW)」です。
この記事でわかること
- MSWに相談できる具体例(お金・仕事・家族など)
- 予約から相談当日までの簡単な流れ(電話・メール文例つき)
- 費用や対象の注意点と、病院以外の相談窓口
8年間も隣にいたのに…私がMSWの扉を叩くまで

主治医は信頼できる方でした。
でも、相談できるのは病気や薬のことだけ。
「傷病手当金の書類の書き方が分からない…」
「休職について、病気を理解してくれない上司にどう説明すれば…」
「そもそも、こんなこと医師に相談していいのかな…」
そんな切実な悩みを打ち明けることはできず、「忙しい医師の時間を奪ってはいけない」と勝手に線を引いていたのです。
転機は、会計待ちで見つけた一枚のポスターでした。
「医療福祉相談室」。
そこに書かれた言葉に、吸い寄せられました。
電話をかけるのは勇気がいりましたし、相談室のドアを開けるときは、やはり緊張しました。
でも、MSWの方は穏やかな笑顔で迎え入れ、私のつたない話を、一度も遮らずに聞いてくれました。
私が具体的に相談したのは、「傷病手当金の申請書類の書き方」でした。
「この欄は、どう書けばいいですか?」と書類を見せると、「一緒に確認しましょう」と言って、一つひとつ丁寧に教えてくれたのです。
その上で、「大変でしたね。よく一人で頑張りましたね」と。
8年間気づかなかった私が、MSWの方の一言で救われました。
あなたも一歩を踏み出して、きっと大丈夫です。
医療ソーシャルワーカー(MSW)ってどんな人?医師との役割の違い
医師との役割の違いを、シンプルにまとめるとこうなります。
あなたの治療チーム
- 医師:「病気そのもの」を治療する専門家
- MSW:「病気が原因で起こる、暮らしの困りごと」を解決する専門家
多くのMSWは、社会福祉士や精神保健福祉士といった国家資格を持っています。
あなたが安心して治療に専念できる環境を、一緒に整えてくれるパートナーなのです。
「こんなことまで?」MSWに相談できることリスト
実際に私が助けてもらった経験も踏まえ、具体的な相談例をご紹介します。
① お金や公的支援の悩み
- 治療費がいくらかかるか不安…
- 医療費を軽くする制度を使いたい(自立支援医療など)
- 休職中の生活費が心配…(傷病手当金・障害年金など)
- 制度の申請書類の書き方を教えてほしい
- 精神障害者保健福祉手帳のメリットや申請について知りたい
② 仕事や復職の悩み
- 今の仕事を続けるのがつらい…
- 休職したいけど、会社への伝え方が分からない(休職)
- 復職に向けた準備や、会社との交渉が不安
- 障害者雇用という選択肢も知りたい
③ 家族や人間関係の悩み
- 家族に病状をどう説明すればいいか分からない…
- 家族との関係がストレスになっている(家族との接し方)
- 一人暮らしで、頼れる人がいなくて孤独…
どうすれば会える?MSWへの相談、簡単な3ステップ
そう感じたあなたのために、相談までの具体的な流れをご紹介します。
- STEP1相談窓口を探す
MSWは、多くの総合病院や大学病院に常駐しています。
「医療福祉相談室」「患者支援センター」「地域医療連携室」といった名前の部署を探してみましょう。かかりつけ病院のホームページで探すか、受付で直接聞いてみるのが確実です。
- STEP2電話やメールで予約する
相談したい部署が見つかったら、電話やメールで予約を取ります。
うまく話せなくても大丈夫。「生活のことで相談したい」と伝えるだけで意図は伝わります。電話でこう伝えよう(コピーOK)
「医療ソーシャルワーカーの方に、生活や制度の相談をしたく、予約をお願いできますか」
メールでの文例(コピーOK)
件名:医療ソーシャルワーカー相談の予約希望
本文:
いつもお世話になっております。
生活や制度について相談したく、医療ソーシャルワーカーの予約をお願いできますでしょうか。
可能な日時をいくつかご教示いただけますと幸いです。 - STEP3安心して話す
予約した日時に、病院の相談室へ向かいます。
相談はプライバシーが守られた個室で行われるので、安心してください。もし不安なら、相談したいことをメモに書いて持っていくだけでも大丈夫。
MSWは、あなたのペースに合わせて、気持ちを整理する手伝いをしてくれます。
相談前に準備しておくと安心なこと
相談前チェックリスト
- 困っていること:(例:医療費、生活費、職場への伝え方)
- 利用中の制度:(例:自立支援医療、傷病手当金など)
- 持ち物:(例:保険証、診察券、お薬手帳、申請したい書類の下書き)
- 聞きたいことリスト:簡単なメモで大丈夫です
相談する前に知っておきたい注意点
費用や対象者について
- 費用:多くの病院で無料で相談できますが、施設により有料の場合もあります。予約の際に必ずご確認ください。
- 対象者:病院によっては、その病院の患者さんやご家族でなくても相談できる場合があります。「患者じゃないから…」と諦めず、まずは電話で問い合わせてみましょう。
病院以外にもある、あなたの味方
代替窓口
- 精神保健福祉センター:医療・生活全般の公的な相談窓口
- 自治体の障害福祉課:障害福祉サービスに関する相談・手続き
- 社会福祉協議会:生活資金の貸付などの相談
- ハローワーク(専門援助部門):障害のある方の就労相談
よくある質問(FAQ)
Q. 予約は必要ですか?
はい、ほとんどの場合、予約が必要です。
まずは電話で問い合わせてみましょう。
Q. 相談の時間はどれくらいですか?
1回あたり30分~60分程度が一般的です。
状況に応じて継続して相談することもできます。
Q. 家族が同席してもいいですか?
はい、もちろん可能です。
ご本人だけでは説明が難しい場合など、ご家族と一緒の相談も歓迎されます。
Q. 相談した内容の秘密は守られますか?
はい、相談した内容があなたの許可なく外部に漏れることはありませんので、安心してください。
ただし、ご自身や他の人の命に危険が及ぶ可能性がある場合など、ごく例外的な状況では関係機関と情報を共有することがあります。
詳しくは相談時に担当者が説明してくれます。
あなたは、もう一人で頑張らなくていい
うつ病の治療は、時に孤独です。
でも、あなたはもう、一人で全てを抱えなくてもいいのです。
MSWは、あなたのすぐ隣で、足元を照らしてくれる存在。
絡まった悩みの糸を、一本ずつ一緒にほどいてくれる、心強いパートナーです。
もし今、あなたが抱えきれないほどの不安の中にいるのなら。
まず最初の小さな一歩として、かかりつけの病院のホームページを開き、「患者支援センター」という言葉を探してみませんか?
その一つの行動が、あなたの明日を、きっと変えてくれます。
緊急で助けが必要なとき
もし、今すぐ消えてしまいたいほどのつらさを感じ、命の危険がある場合は、ためらわずに119番へ連絡してください。
すぐに誰かに話を聞いてほしい時は、お住まいの地域の精神保健福祉センターや、各種いのちの電話相談窓口があります。
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