- うつ病の精神療法を探している
- 認知行動療法をわかりやすく知りたい
- いろんな認知行動療法の体験談が読んでみたい
認知行動療法ってなに?
本やネットで「認知療法」ってよく聞くんだけど、あれってどんなものなの?
正確には認知行動療法(CBT:Cognitive Behavior Therapy)というものだね。
私も今までいろんな認知行動療法を試してきたよ。
カウンセリングでするイメージあるけど、お金かかりそう…。
もちろんカウンセリングでもできるけど、病院の保険適用内だったり、本やパソコンで学ぶことも可能だよ。ここからは順を追って説明するね。
認知行動療法の基になった療法は過去の集大成
- 1957年にアメリカの臨床心理学者のアルバート・エリス氏が「論理療法」を提唱
- 1963年にアメリカの医学者のアーロン・ベック氏が「認知療法」を提唱
- 1990年代に2つの療法の共通点を融合させてできたのが「認知行動療法」
もう60年以上前のモデルが基になっているのね。
歴史が長く世界的にも一般的になってるから、よく耳にするんだと思うよ。
認知行動療法って簡単にいうとどんなもの?
難しそうだから、簡単に説明してほしいなぁ。
じゃあ例を挙げて説明するね。例えばこんな経験ない?
ある日の会社の朝、廊下で上司とすれ違う・・・
あ、課長。おはようござます。
・・・。(何も言わずに過ぎ去っていく)
(無視された・・・!?
ひょっとして私、嫌われているのかも・・・)
どう?こんな経験ない?
あるある!挨拶したのに返事がないと「私、何かしたのかも?」って不安になって、一日気分が重くなったりするよ。
この歪みに対してアプローチするのが認知行動療法の基本だね。
認知行動療法は認知の歪みを見つめること
先ほどの例では上司に挨拶をしたけど、返事が返ってこなかったというものでした。
この時、やおこさんにはどんなこころの変化があったのか、時系列でまとめてみます。
1. 出来事
挨拶をしたけど返ってこなかった
2. 自動思考
私、嫌わているかも・・・?
3. 感情
悲しみ、落ち込み(人によっては、怒り、憤りなど)
4. 行動
仕事が手につかなくなる、その上司を避けるようになるなど
認知行動療法において、大切となるのは、 1.出来事 は事実なのでどうしようもできません。
では 2.自動思考 を変えるのかというと、そうでもありません。
これは、その人が瞬間的に浮かんでくる思考なので変えることは難しいです。
人によっては、挨拶が返ってこないことをなんとも思わない人もいます。
その場合は日常生活になんの支障もありませんので、認知行動療法をそもそもする必要がないともいえます。
では、やおこさんの場合はどうでしょうか。
3.感情 4.行動 を見ればわかるように、そのあとの感情や行動に支障が出ています。
つまり認知の歪みがあるということです。
認知の歪みについては詳しく記事をまとめていますので、よければ一緒に読んでみて下さい。
ところで、どうして挨拶が返ってこないと、嫌われているって思ったの?
だって、いつもはちゃんと返してくれる人なのに今朝は返さないなんておかしいでしょ?
なるほど。つまり、自動思考が起きてから感情に変わるまでに、関連付けをしたんだね。
認知の歪みに対して反証してみる
ここでいう反証とは自分で第三者的目線から別の見方をするということです。
いつもは挨拶を返してくれる → 今朝は返してくれなかった
- 反証1:やおこさんの声が小さくて、上司に聞こえなかった
- 反証2:挨拶を返してくれたけど、上司の声が小さくて聞こえなかった
- 反証3:イヤホンをしていて音楽を聞いていた
- 反証4:考え事をしていて気付かなかった
- 反証5:その日、上司の体調が悪くて返す元気がなかった
などなど、可能性はいろいろ出てきましたね。
もし、自分で考えるのが難しいようでしたら、あなたが親友に相談されたと思って考えてみて下さい。
こうして自分の認知の歪みに反証をすることで、
「嫌われているのかもしれない」
という気持ちから
「その日はたまたま返せない状態だっただけ」
と気分が変われば、やおこさんの感情(悲しみ、落ち込み)は100から0にはならなくても、50くらいに減らしていけます。
これが基本的な認知行動療法の考え方です。
最初はカウンセリングや病院で対面でするのが望ましいですが、難しいようであれば本(ワークブック付きがオススメです)を1冊買うと、そこに書き込みながら1人でもできます。
認知行動療法のメリット・デメリット
認知行動療法のメリット
- 歴史が古く世界中にエビデンス(医学的根拠)があり、効果が証明されている
- 精神療法のため身体的副作用がない
- うつ病治療中の人だけでなく、認知の歪みが多い人の予防的観点からも活用できる
認知行動療法のデメリット
- カウンセリングや医療機関で行うと一定の経済的負担がかかる
- 効果が出るまで回数が必要なため、長期的な療法となることが多い
- 精神的に力を使うため、うつ病の症状がひどい時は避けたほうが良い(主治医の許可は必須)
認知行動療法を試してみた体験談
最初は集団認知行動療法(2006年)
認知行動療法にも色んな種類があるんですが、私がこの療法と出会ったのは参加者たちが集まる病院の集団認知行動療法でした。
通常はカウンセラーなどと対面で一対一でするものですが、こちらは集団(20人程度)で行いました。
進行役の人からルールの説明があります。
参加者がペアを組み、まずは自己紹介から。
そして、過去の自分のツラい体験談を相手に話します。
そして聞く方は傾聴(耳を傾けて熱心に聞く)します。
そして、話し終わったら、反証を行うのです。
一見、素人同士がやって意味があるのかと思いますが、他人が考えることは自分とは全く違うので、「そんな考えは浮かばなかった」という反証が出てきます。
逆に相手が悩んでいることを聞いたりすると、「そういうことで悩むこともあるんだなぁ」と気付かされることもあります。
集団認知行動療法のメリットは、同じような悩みを抱えている人の話をダイレクトに聴くことができます。
そしてカウンセラーのようなこころのプロではないので、新鮮で生々しい考えが知れます。
デメリットは、知らない人とのグループワークなので、集団行動が苦手な人や初対面は緊張しやすい人には向いてないかもしれません。
そういう人は専門家であるカウンセラーと信頼関係を築きながら認知行動療法をしていく方がいいです。
カウンセリングによる認知行動療法(2007年)
本格的にカウンセリングを始めたのが2007年頃でした。
カウンセラーとの信頼関係を少しずつ深め、ある程度のことは腹を割って話せるようになってから、認知行動療法を始めました。
ここではワークシート(紙)を使って、自分の過去と見つめ合い、つらかったものからカウンセラーと一緒にテーマを選びます。
カウンセリングは話を聴いてくれる場というよりは、自分と向き合う場です。
正直、楽しいものではありませんし、精神的な負担もかかります。
ですので、主治医の了承を得た人しかオススメできませんし、カウンセリング機関によっては主治医の許可が必須です。
あとは、ケーススタディ(具体的な事例)に対して反証をひたすら行います。
考えがまとまらなかったり、うまくいかない時は、カウンセラーがアドバイスしてくれるのでスムーズに進みます。
私の場合は対人関係が一番の問題だったので、それを中心に「出来事」→「自動思考」→「反証」を繰り返しました。
終わる頃にはぐったりしたのを覚えています。
そのような場を何回か繰り返して、カウンセラーとの認知行動療法は終えました。
本で学び、ひたすら自分と向き合った認知行動療法(2008~2015年)
認知行動療法に興味を持った私が何冊か本を買って復習しました。
慣れてくるとワークシート(紙)がなくても、頭の中でできるようになりました。
何か不安なことがあった時は「あ、これは認知が歪んでいるな」と自分で気付くことができ、ひたすら反証!反証!とクセをつけるようにしました。
性格が180度変わることはないので、自動思考自体は相変わらず歪んでましたが、反証することでネガティブな気持ちや行動は少しずつ減っていきました。
独自に生み出した夫婦認知行動療法(2016年~)
私が一番これだ!と思ったのが妻と一緒に認知行動療法をするというものです。
そんな療法名は存在しないので、私が勝手に命名したのですが、やり方はいたってシンプルです。
私が不安に思っていることをぼやく。妻が反証する。私も一緒に反証する。それだけです。
これってどこの家庭や恋人、友人間でもあると思うんですよね。
心配ごとを話して、相手に「それは考えすぎだよ」って言われると少し安心するじゃないですか。
なので我が家では、定期的に実施していて、何か不安がよぎる → 認知の歪みだなって思う → 夫婦認知行動療法をする、ということをしています。
始めてから数年経ちますが、これが効果抜群でした。
最初の頃は、実施する回数も多かった(それだけ不安になることが多かった)のですが、徐々に不安になることが減ってきました。
つまり認知が歪む頻度が減ってきたのです。
過去の私であれば不安に思っていたことが、最近は「そんなこともあるさ」と思えるようになりつつあります。
うつ病に認知行動療法(CBT)を実際に試してみたのまとめ
ここまで長いこと認知行動療法を続けていても、うつ病が長期化してる私の言葉には説得力がないかもしれません。
結局、自動思考自体はほとんど変わらないですし、反証するのにもこころに余裕がないと難しいんですよね。
ですので、性格を変える「魔法」というわけではありません。
しかし、自分の頭の中で何が起きているか、それを修正できる手法(私は武器と呼んでいます)を知っているだけで、気持ちの持ちようが変化することは事実です。
どのような武器が合うかは人それぞれですので、もし認知行動療法に興味を持った方は、うつ病治療中の人は主治医の許可を得て、そうでない人もうつ病の予防策として試してみてはいかがでしょうか。
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