【体験談】HSPで疲れきった私が、うつ病になる前に知りたかった心の守り方

HSPで疲れやすいあなたへ「その“生きづらさ”は、あなたのせいじゃない」と語りかけるアイキャッチ画像。当事者の男性が、心を軽くするお守りのイラストと共に、繊細な心を守るヒントを示している。
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「人より音や光、感情に敏感で、毎日ヘトヘトになってしまう」――それは“心が弱い”からではなく、“HSPという気質”のせいかもしれません。

この記事は、「HSP気質のせいで生きづらい…」「もう何もかもに疲れた…」と感じている、かつての私のようなあなたへ向けて書いています。

  • HSPとうつ病、両方を経験した当事者のリアルな体験談がわかります。
  • 心が壊れてしまう前に、自分を守るための具体的な方法(処方箋)がわかります。
  • 「繊細さ」を弱点ではなく、自分だけの“お守り”として捉え直すヒントが見つかります。

私の心が「麻痺」していた、22歳の頃の話

少しだけ、私の話をさせてください。

私が社会人になったのは22歳の頃。サービス残業や終電帰りが当たり前の時代でした。
「みんなやっているんだから」と自分に言い聞かせ、心と体を麻痺させながら、ただ目の前の仕事をこなす毎日。
忙しすぎて、自分を責める余裕すらありませんでした。

夜になっても寝たくないんです。
眠ってしまえば、またつらい明日が来てしまうから。
週末は一日中、泥のように眠って過ごすだけ。唯一の息抜きは、金曜の夜に同僚と深酒をすることでした。

当時の私は、HSPという言葉すら知りませんでした。
だから、日常のささいなことで心をすり減らしていくのを、すべて「自分の弱さ」のせいだと思い込んでいたのです。

スーパーのけたたましいBGMや子どもの泣き声で心臓の鼓動が早くなり、人の顔が靄がかって見えること。
職場で同僚がため息をついただけで、何日も眠れなくなること。

そんなサインを無視し続けた結果、私の心は限界を迎えました。
朝、体が動かなくなり、会社へ向かう途中の公園で、ただ時間だけが過ぎていくのを眺める日が増えていきました。
そして26歳の時、ついに産業医との面談を経て「うつ病」と診断されたのです。

診断書を手に「これで、ようやく休める」と安堵したのを、今でもはっきりと覚えています。

もし、あなたも同じような息苦しさを感じているなら、この記事はきっと、あなたの心を少しだけ軽くする「お守り」になるはずです。

HSP(繊細さん)とは? 4つの特徴(DOES)を私の言葉で解説します

休職中にたくさんの本を読む中で、私は初めて「HSP」という言葉に出会いました。
その特徴を知った時、「これは、まさに自分のことだ」と、長年の謎が解けたようにすっと心に入ってきたのです。

HSPは病気ではなく、生まれ持った「気質」。
だから治すのではなく、うまく付き合っていくものなのだと知りました。

HSPには、「DOES(ダズ)」と呼ばれる4つの特徴があります。
一つひとつ、私の体験談を交えながら、やさしく解説していきますね。

深く考えすぎて、頭の中がいつも忙しい (Depth of Processing)

要約:HSPは情報を深く処理するため、考えすぎて疲れやすい傾向があります。

HSPの人は、物事を深く、多角的に考える傾向があります。
一つの出来事から、たくさんのことを感じ取ったり、想像を膨らませたりします。

私の場合は…
友人から「ごめん、また今度ね!」とメールが来ただけで、「何か怒らせるようなことを言ってしまったかな?」「“また今度”は、もう誘わないでっていう意味かな?」と、頭の中でぐるぐる思考が始まり、一週間くらい悩んでしまうことがありました。

刺激に敏感で、人より早く“電池切れ”になる (Overstimulated)

要約:HSPは外部からの刺激に敏感で、人より早くエネルギーを消耗しやすい性質があります。

外部からの刺激(光、音、匂い、人の感情など)を人一倍強く受け取ってしまうため、疲れやすいのが特徴です。エネルギーの消耗が激しく、こまめな休息が必要になります。

私の場合は…
友人との旅行はとても楽しいのですが、一日中一緒に行動していると、夜には必ず一人の時間を作らないと心がパンクしそうになります。楽しいはずなのに、なぜかぐったり疲れてしまう自分に、罪悪感を抱くこともありました。

人の気持ちが流れ込んできて、自分の感情かわからなくなる (Emotional reactivity & Empathy)

要約:HSPは共感力が高く、他人の感情に強く影響されやすいという特徴があります。

共感力が非常に高く、相手の感情がまるで自分のことのように流れ込んできます。
人の喜びも悲しみも、自分のことのように感じてしまいます。

私の場合は…
ネットで悲しいニュースを見たり、心無い書き込みを見ると、当事者の方の気持ちを想像しすぎてしまい、何日も気持ちが沈んでしまうことがよくあります。相手の感情と自分の感情の境界線が、あいまいになってしまう感覚です。

小さな音や光、匂いにも、心がざわついてしまう (Sensitivity to Subtle stimuli)

要約:HSPは五感が鋭く、他の人が気づかないような、ささいな刺激も拾ってしまいます。

五感が鋭く、他の人が気づかないような、ささいな刺激にも敏感に反応します。

私の場合は…
寝室にある時計の「カチ、カチ…」という秒針の音が一度気になりだすと、もう眠れなくなってしまいます。冷蔵庫のモーター音や、遠くで鳴いている救急車のサイレンなど、普通なら気にも留めないような音が、私にとっては心をかき乱す騒音に聞こえることがあるのです。

HSPかどうか、気になったあなたへ

アーロン博士が作成したセルフチェックリストがあります。
ご自身の特性を理解する、一つの参考にしてみてくださいね。

※このセルフチェックは参考情報です。正式な診断を代替するものではありません。症状が強い、または生活に支障が出ている場合は、専門医や公的な相談窓口に相談してみてください。
  1. 自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づくほうだ
  2. 他人の気分に左右される
  3. 痛みにとても敏感である
  4. 忙しい日々が続くと、ベットや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃れられる場所にひきこもりたくなる
  5. カフェインに敏感に反応する
  6. 明るい光や強い匂い、ざらざらした布地、サイレンの音などに圧倒されやすい
  7. 豊かな想像力を持ち、空想に耽りやすい
  8. 騒音に悩まされやすい
  9. 美術や音楽に深く心動かされる
  10. とても良心的である
  11. すぐにびっくりする
  12. 短時間にたくさんのことをしなければならない時、混乱してしまう
  13. 人が何かで不快な思いをしている時、どうすれば快適になるのかすぐに気づく
  14. 一度にたくさんのことが頼まれのがイヤだ
  15. ミスをしたり、物を忘れたりしないようにいつも気をつける
  16. 暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている
  17. あまりにたくさんのことが自分のまわりで起こっていると、不快になり神経が高ぶる
  18. 空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる
  19. 生活に変化があると混乱する
  20. デリケートな香りや味、音、音楽などを好む
  21. 動揺するような状況を避けることを、普段の生活で最優先している
  22. 仕事をする時、競争させられたり、観察されていると、緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる
  23. 子どものころ、親や教師は自分のことを「敏感だ」とか「内気だ」と思っていた

出典:ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。(著者:エレイン・N・アーロン)

「HSPだから」は「うつ病」のサインを見逃す危険な言葉かもしれない

「疲れやすいのも、落ち込みやすいのも、HSPの気質だから仕方ない」

もしHSPという言葉を知っていても、そう思い込んでしまうのは危険かもしれません。
なぜなら、その自己判断が、うつ病のサインを見逃すことにつながる可能性があるからです。

HSPの「刺激に疲れやすい」という特性と、うつ病の「何をしても楽しくない」「体が鉛のように重い」といった症状は、とてもよく似ています。

「気質」のせいにしているうちに、本当は治療が必要な「病気」のサインを見過ごしてしまう。
私も、もう少し早く専門家を頼っていれば、あんなに長く苦しむことはなかったかもしれません。

もしあなたが「ただの疲れ」とは違う、心のエネルギーが枯渇していくような感覚を覚えているなら、それはHSPの気質だけでなく、HSPとうつ病が重なり合っているサインなのかもしれません。

心が壊れる前に試してほしい。私が実践してきた5つの「心の守り方(処方箋)」

ここでは、うつ病も経験した私が、試行錯誤の末に見つけた「繊細な心を守るための具体的な方法」を5つ、処方箋としてご紹介します。

すぐに効果が出るものばかりではありません。
中には、私ができるようになるまで20年近くかかったものもあります。
だから、焦らないでくださいね。

「これならできそう」と思えるもの一つから、試してみてください。

処方箋1:情報を断つ「デジタル・デトックス」の時間を作る

スマホやPCから流れてくる情報は、知らず知らずのうちに私たちの心を消耗させます。
意識的に情報から離れる時間を作りましょう。

まず今日できること:

  • 寝る前の15分間だけ、スマホを機内モードにする
  • 通勤時にヒーリングミュージックを聴く

処方箋2:「刺激の総量」を意識して、予定を詰め込みすぎない

一日に受け取れる刺激の量には、人それぞれ上限があります。
自分のキャパシティを理解し、予定に「余白」を作ることが大切です。

まず今日できること:

  • 週末、土曜に予定を入れたら、日曜は意識的に「何もしない日」と決めてみる

処方箋3:「これは相手の感情」と心の中で境界線を引く練習

相手の不機嫌や不安を感じ取っても、それはあなたのせいではありません。
「これは私の感情ではない」と心の中で境界線を引く練習です。

正直に言うと、これはすぐにはできません。私も、休職中に心理学を学び、46歳になった今、ようやく少しずつできるようになりました。だから、できなくても自分を責めないでくださいね。まずは「そういう考え方もあるんだな」と知っておくだけで十分です。

処方箋4:自分だけの「安全基地(セーフプレイス)」を持つ

心が疲れたときに、いつでも逃げ込める場所や時間を用意しておきましょう。
それは立派な場所でなくていいんです。

私の場合は…新社会人の頃、会社の個室トイレが唯一の安全基地でした。そこで5分間だけ目を閉じるだけで、なんとか午後を乗り切れた日もあります。

処方箋5:「疲れた」と正直に言える人を一人だけ見つける

すべての人に理解してもらう必要はありません。
ただ一人でいいので、「疲れた」と正直に言える相手を見つけられると、心はぐっと楽になります。

26歳の頃の私は、当時の妻にすら言えませんでした。会社の先輩に、ただ話を聞いてもらうだけで救われたのを覚えています。もし身近に話せる人がいないときは、匿名で相談できるサービスに頼るのも、大切な選択肢の一つです。
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繊細さは、あなただけの「お守り」になる

ここまで読んでくださったあなたは、きっとご自身の繊細な気質に、たくさん悩んできたのだと思います。

ですが、その繊細さは、決して弱点ではありません。
人の痛みに深く共感できる優しさ。道端に咲く花の美しさに、心から感動できる豊かさ。

それらはすべて、あなたの繊細さがもたらしてくれた、かけがえのない「才能」です。

もし私が、20代の頃の自分に声をかけるなら、こう言うでしょう。
「大丈夫。そこが世界の全てじゃない。あなたには、もっと輝ける場所がたくさんあるよ」と。

今はまだ、その気質に振り回されて「生きづらい」と感じるかもしれません。
でも、これから少しずつ付き合い方がわかってくれば、その繊細さは、あなたの人生をより豊かにしてくれる、特別なお守りになってくれるはずです。

まとめ:あなたは、あなたのままで、きっと大丈夫

最後に、この記事でお伝えした大切なことを振り返ります。

  • HSPは病気ではなく、うまく付き合っていく「気質」です。
  • 「HSPだから」と思い込むことで、うつ病のサインを見逃してしまう危険性があります。
  • 心が壊れてしまう前に、焦らずできることから自分を守ってあげてください。
  • あなたの繊細さは、弱点ではなく、人生を豊かにする「お守り」になります。

あなたは、あなたのままで、そのままで素晴らしい存在です。
どうか、自分自身をこれ以上、責めないでくださいね。

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もし、もう少し知りたいことや、誰かに相談したいことがあれば、こちらの情報も参考にしてみてください。

もし「今すぐ助けが必要だ」と感じたら、一人で抱え込まず、ためらわずに最寄りの医療機関や公的な相談窓口に連絡してください。あなたの力になってくれる場所が、必ずあります。

▼ こころの健康相談統一ダイヤル
電話番号:0570-064-556

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